●「いそぽのふわぶらす」初演のお知らせ
●「精霊の海」初演のお知らせ
来るべき
いそぽのふわぶらす及び
精霊の海初演への準備に紛れ、やや滞りぎみだったもう一つの委嘱作品=丹後地方のとある子守唄に基づく新作=のスケッチが、"熟成"を待ちに待った甲斐あって、いよいよ本格的に動き出し、ほっと一息ついた本日の夕暮れ時。
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マンションの庭に面した窓から外を覗いてみると、景色はいよいよ秋も深まって、すっかり湯豆腐と鍋の頃合い。
・・・というわけで、ちょっと前にまとめて注文しておいた
飯尾醸造の「ゆずぽん酢」の箱を開けてみて、びっくり。
五代目見習いの飯尾彰浩氏自筆の丁寧なお手紙と一緒に、思いがけず琥珀色の美しいおまけがついていた。
向かって左:我が家の秋冬の定番、柑橘かぐわしい「ゆずぽん酢」
真ん中:この数年来一日たりとも欠かしたことのない「富士酢」
向かって右:この度の新顔「ピクル酢」(彰浩氏ご本人が昨年開発した新商品)
因みに我が家のもう一つの定番は、飯尾醸造レシピ本京都のお酢屋のお酢レシピにも載っている、「紅芋酢」で作るビアカクテル。
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実は当方この飯尾醸造のお酢たちの大ファン。
ことあるごとに友人知人にお薦めしたりお贈りしたり。
数年前の夏には海水浴の帰りに藏に立ち寄って、念願の見学もさせて頂いた。
それに五代目見習いの彰浩氏とは、母校・宮津高校の一年違いの同窓生でもある。
日本海にほど近い藏の中、静かに発酵・熟成される、その様子をそぉっと覗いてみると、
こんな感じ。
見学の後、様々な飯尾醸造のラインナップを次々と試飲させて頂いたら、帰る頃には不思議な事に、海水浴に疲れたはずの身体が、内側からかっかと熱を帯びるばかりに回復していたのには、驚いた。
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丹後は大江山連峰の麓・柿ヶ成(かきがなる)地区の田圃で穫れた米を使って、完全なる無農薬で作られる、ホンモノの"酢"。
一年以上掛けて醸されるその芳醇な味わいは、一般に売られている大抵の"お酢風味"化学合成液とは、ちょっと比較を絶する程の違いがある。
というより私はこの富士酢に出会うまで、いわゆる"酢"なるものを好んだ記憶はない。あの咽せかえるような殺伐とした刺激臭が、実に経済効率優先の大量生産のための化学合成の為せる業であった、と他ならぬこの富士酢に知らされたという訳。
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長い長い時を経て、人と風土の静かな営みから産まれる富士酢。
この琥珀色の美しい液体には、粒粒と涌き上がる天然のエネルギーが充満しているらしい。
作曲家にとってのインスピレーションもまた、慌てず騒がず為すべき事をして、ひたすら時を待つものにのみもたらされる、天や地や海からの、ある恩恵のようなもの。
かくありたし
と、あらためて思った次第。
©HIRANO Ichiro 2011
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