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小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの『知られぬ日本の面影(Glimpses of Unfamiliar Japan)』所収、「日本海に沿って(By the Japanese Sea)」という短編の中に、不思議な一節がある。
出雲から東へと日本海を沿う旅の最後、浜村温泉の宿で見た一夜の夢のスケッチである。 お寺の境内であろうか。 どこか青白い敷石が敷きつめられた広い場所に、薄日が射している。 私の前に女がひとりいる。 若くもなければ、年がいっている風でもない。 ただひとり、女が大きな灰色の柱の台座に座っている。 その柱が何を支えているのか、私には女の顔しか見えないのでよくわからない。 女の顔にどこか見覚えがあるような気がする。 そう、そうだ、出雲の女だ。 やがて、その女が不気味なものに思えてきた。 女の唇は動いているが、目はじっと閉じたままである。 私はその女から目が離せなくなった。 すると、その女は、遠い昔から長の歳月の隔たりを越えて聞えてくるようなかすかな声で、もの哀しい歌を静かに歌い始めた。 その歌を聴いているうちに、私にはケルトの子守歌の記憶がおぼろげながら甦ってきた。 女は歌いながら、片手でその長い黒髪を振りほどいている。 すると、そのほどいていた髪がくるくると渦を巻いて、石の上に落ちた。 そのとき、女の髪の色が黒から青にさっと変わった。 その日射しのような淡い水色の髪は、くねくねと青いさざ波を立ててうねりながらうごめいている。 そして突然、その波がはるか彼方に遠のいたかと思うと、私は女も消えてしまったことに気づいた。 そこにあるのは、ただ一面の大海原だけであった。 そして空の果てまで、音もなく、長くゆっくりと砕け散る青い波頭が、きらりきらりと光っていた。 目を覚ました私の耳に、夜の闇から、現実の海のざわめきが聞こえてくる。 仏海(ほとけうみ)を帰ってゆくしわがれ声の大きな響きが、精霊が潮の流れに乗って帰ってゆくざわめきが、聞こえてくるのであった。 (ラフカディオ・ハーン著/池田雅之訳『新編 日本の面影』(角川ソフィア文庫)より) 世は明治、日本は西洋文明を急速に導入し、いっぱしの「近代国家」となるべく、急速に変貌を遂げようとしていた時代。 当時さまざまな「お雇い外国人」が日本にやって来たが、来日後わずか数カ月にして出雲を訪れ、(伊勢ではなく)出雲をして「神々の國の首都(The Chif City of the Province of the Gods)」と評したハーンの慧眼は、考えてみると恐るべき直観である。 それは例えば、他国の文化を記号的に「解釈」してみせて矢鱈に嬉しがるどこぞの知識人達とは違い、単なる「関心」とか「理解」とかいうものを越えた、いわば魂の親和力にでも導かれたかのような、因縁めいた確信だったのだろう。 この夢の一文を、ハーンの後任として帝大教授となった夏目漱石の『夢十夜』の幾編かと併せ読む時、漱石の抱えた漠たる不安と、ハーンの日本(とりわけ出雲)への只ならぬ心服との間に、立場や表現こそ違え、変貌する時代をめぐっての、奇妙な符号と共振を見出さずにはいられない。 つまるところ、日本の近代化が目指した西洋文明と、その絶対的優位性の保証たる「普遍性」なるものが、たかだか西洋近代における「普遍」に過ぎず、むしろその近代が軽蔑し、白眼視した(否、し続けている)ところの、あらゆる土地の、「地方」の「特殊」な文化の奥底に、根強く揺るぎない本当の普遍が、いきづいているのではないか・・・。 漱石の懐疑とハーンの確信とは、全く反対の方向から、限りなく同じ一点を指し示している。 ハーンの夢の中に、一見唐突にあらわれた、ケルトの響き。 ここには、もう一つの「普遍」の発見が描かれている、と私は思う。 Copyright(C)HIRANO Ichiro.All rights reserved.
by uramarebito
| 2006-03-25 22:33
| その他
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Comments(2)
「地方」の「特殊」な文化に宿る普遍性・・・真実はすぐそこにあったのですね。気づかず過ごしてきたけれど・・・。
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uramarebito at 2006-04-02 18:13
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