●作品展のお知らせ●
作曲家 平野一郎の世界
[西宮公演]
2007年8月23日(木)
(財)青山財団助成公演
作曲家 平野一郎の世界
[京都公演]
2007年8月26日(日)
さてここからが、
音の話。
元・人形浄瑠璃の義経千本桜。
その来歴を生かすように、通常の下座音楽に加え、舞台上には
浄瑠璃と
太竿三味線が陣取り、絶妙に立体的な多様式状態を作り出す。
この義太夫の唸りと太竿三味線、こと平家滅亡のくだりになると、あたかも琵琶法師の
平家琵琶の如き
音声(オンジョウ)を奏でる、のである。
しかも、単に三味線が琵琶の音色を模してマニアックに面白がっている、などというものではなく、その唸りと響きは平家琵琶の音世界の
背後の淵源にまで、限りなく近づこうとしているかの様。
芝居と共に、音楽もまた、時代に対する鎮魂を奏でているのだ。
近世が中世を弔っている・・・それは、歌舞伎「義経千本桜」の当時における
同時代と
前時代とが、いかなる説明も必要としない直裁さで、二重写しに表現される瞬間、でもあった。
* * *
ところで考えてみれば、琵琶も、三味線も、それぞれに、かつて日本に渡来してきた楽器。
しかし、日本に生きる人々の心の有り様に、深く寄り添い続けたからなのだろうか。いつしかそれらは、間違いなく私たちの伝統楽器の一部となっている。
ならば、
「西洋音楽」や「西洋楽器」もまた、否応なく近代日本を体現しつつ、前時代を弔い讃える響きをその
淵源から奏でる時、それらは本当の
私たちの音楽となるのかも知れない・・・。
などという考えを弄びつつ、とりあえずは、悲しくも美しい別世界を、心ゆくまで堪能した次第である。
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©HIRANO Ichiro 2007