古事記に登場するスサノヲノミコトの、ヲロチ退治の物語、
その中に登場する老夫婦、アシナヅチ、テナヅチが、なぜだかコワイ。
訳の分からない怪物、ヲロチも勿論おそろしいはずなのだが、
私はこの老夫婦の方が、なぜだかおそろしくてしょうがない。
祭礼で演じられる各地の石見神楽を観て一層、その印象は強まるばかり。
来訪した客人スサノヲに泣きついて、娘クシナダと引き換えにヲロチ退治を進言し、毒の酒をせっせと作る。
毒酒を呑んでのたうつヲロチを物蔭からこっそり覗き、ヲロチ退治が終るや否や、やれ万歳、とばかりに喜び勇む。
もしかすると本当は、ヲロチはなにも悪くないのでは?
スサノヲもまた騙されているのでは?
全てはこの老夫婦のワルダクミなのでは?!
迫真の演技が成功して、物蔭で北叟笑む老夫婦の姿が眼に浮かぶ。。。
などと思っていたら、芦原すなお氏の「スサノオ自伝」(集英社)で、
この老夫婦の曰く言いがたい無気味さが見事に表現されていた。
・・・もし「抜け目なさ」というものが、人間の姿をとったらこうなるだろう・・・
いずれにせよ、記紀では、まるで「出雲神話」の体裁で載っていながら、一方の出雲国風土記には毛程も現れないこの「八俣遠呂智(八岐大蛇)」伝説、なにやらヤマト的陰謀の匂いが芬々・・・。
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出雲東部、松江市の八重垣神社に佇むアシナヅチ、テナヅチ神社