去る某日、委嘱新作のフルート協奏曲、
蜃氣樓 ● 協奏曲
三種のフルート、三群の弦楽と
打楽器の為の三連画
SHINKIRÔ ● CONCERTO
-Triptych for 3 Types of Flute,
3 String Ensembles & Percussion-
(2014)ぶじ草稿完了いたしました。
楽曲の構成は以下の通り。
I: 蓬莱 Hôrai
遷宝乃儀・阿 Sempô-no-Ghi Α
II: 方壷 Hôko
遷宝乃儀・吽 Sempô-no-Ghi Ω
III: 瀛州 Eishû
この作品は、フルート奏者・森本英希氏の委嘱に応え、本年春に着手しました。2006年の無伴奏フルート曲
蜃氣樓Iと通底する着想に発しながら、一切の素材を改め取り組んだ新作。古今東西の笛を縦横に操りつつも、その奥にひとつの道を求める、森本氏の音と志に触発されたものです。
蜃氣樓とは一名“海市(かいし)”とも謂い、海底に棲む大蛤(蜃)の呼気から立ち昇る、幻の楼閣都市のこと。故國・斉を滅ぼし世に君臨する秦始皇帝から、不老不死の霊薬探索の命を取り付け、民を率いて海中の三神山〔蓬莱(ほうらい)/方壷(ほうこ)/瀛州(えいしゅう)〕へと旅立ち、竟に戻らなかった方士・徐福(じょふく)。そんな徐福一行の眼前に、吾が列島は蜃氣樓の如く出現したのかも知れません。
〈蜃氣樓●協奏曲〉は、東アジアの古代に霞む徐福渡海伝説と、丹後半島の或る祭礼囃子が私に嘯吹(うそぶ)いた、奇妙に歪むもうひとつの神山とその國の笛人の来歴を巡る、荒唐無稽の空想起源譚。曲は、三神山に擬えた三章と、それらを結ぶ二つの間奏から成ります。独奏者は、三種の笛(フルート/バスフルート/ピッコロ)を場面に応じて執り替えながら、三群の弦楽を纏い・操り・導きつつ、三つの異世界を漂泊します。
同時期に並行した
春の歌/
夏の歌の兄妹でもある本作は、当方にとって初めてのソロ・コンチェルト。
草稿完了とはいえ、ここから徹底的な推敲とスコア浄書&パート譜作成…と作業は延々続きますが、、、初演の詳細など、決まりましたら改めてご案内いたします。
どうぞお楽しみに!
©HIRANO Ichiro 2014