児童合唱と管弦楽の為の最新作
出雲國の神話・伝承・風土に拠る
《連作交響神樂》
交響神樂 第五番
鳥遊
トリノアソビ
(第四番より一足お先に)予定前倒しで、去る8月3日ぶじ初稿完成!
ゑべっさん ゑべっさん
みずのなか くらいか…
奇妙なわらべうたに導かれるこの曲は、出雲・國譲り神話の中、三穂乃埼にて心おきなくトリノアソビ&スナドリしていたコトシロヌシ=恵比寿様が主役。天鳥船に呼び出されて大国主に國譲りを進言するや、とある所作を打って水の中に永遠に“お隠れ”遊ばした事代主命。ああ、あの召集さえ来なければ、神楽の中の可愛い小恵比寿みたいに「ああ釣った、釣った!アアまた釣った、釣った!」といつまでも楽しく昔ながらに魚釣りしていたかっただろう…などと想像しながらの作曲は、古今様々の国譲りへの連想をも駆り立てられて、浮き立つように楽しげな曲想と反比例する、なかなかに精神に重みがのしかかる仕事でした。
そんなわけで、当初は鳥のオノマトペに満ち溢れたディベルティメント風息抜きの作品かと思いきや、それだけではどうにも収まらない、交響神樂の中でも、一段とシュールな曲となりました。このシュールな感じ、何かと印象が似ているな…と考えていると、思い当たったのは何のことはない、この春も訪れた美保神社・青柴垣神事のシュール。そう、民俗行事や神事ほどシュールなものはない?
ちなみに同名異曲の2年先行作品「鳥ノ遊ビ ~木琴ト奏者ノ為ノ物語~」(通崎睦美氏委嘱)とは、編成・構成・内容・素材・コンセプトそして世界観においても、まるで違った作品となりました。それでもごく一部に共通のモティーフが現れます。まったく違った性格だけど、どちらも手塩にかけた子ども。ぜひチャンスがあればいずれ皆様にも聴き比べて欲しいものです。
第五番が完成し、勢い良く38℃灼熱の太陽の下に出てみれば、案の定、庭先は伸び放題の百日紅に、今年も席巻されていました。今は美しさよりも、その生命力が頼もしい。さあ、これから休むまもなく、ヴォーカル&パート作成、そのあと第四番へと進みます。関係者の皆様、今少しお待ちを!
(C)HIRANO Ichirô 2018