はるやはる はるらんまんの なみのはな
「とこよのはる」初演、大成就。
おかげさまで上野の森は満開の花ざかりとなりました。
作曲者は未だ去りがたいその残響の中に彷徨っておりますが、、、
最初の波紋を投げかけてくださった野坂操壽様をはじめ、森の会の皆様、助演者池上英樹・曲淵俊介両氏、関わってくださった全ての皆様、お客様に、心底より御礼申し上げます。
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森の会のみなさんと打物お二人、年明けからのリハーサルではきっと常世ならぬ地獄めぐりさながらのご苦労があったと思いますが、それらすべてがあってこそ一斉に花開く本番でした。
ひとりのこらず全員の、全身を器にして全霊に満たされたその佇まい・振る舞い・打ち弾き歌いは、表現というよりまさしく体現。
はじめ凪の海に一輪おこった小さな波紋が次第にじわじわ波となり大渦を巻いて、ついには沸き立つような物狂いに至るその累累とした持続は、作曲者の妄想を過たず捉え、さらにそれを遥かに超えて圧巻でした。
見えないものが見え、聴こえないものが聴こえ。響きになって溢れるおどろとあやかし、はなやぎとあわれが、満場のお客さんの多くの心を浸した、という確かな実感がありました。
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五月三日憲法記念日の蒼天の下、懐に昭和の闇市を抱き、背に寺町と墓地を負った“明治維新”の古戦場は、明るい顔や暗い顔してせわしなく溢れかえる人でいっぱい。平成令和の光と陰が揺らめく公園は、空想の常世国の悲喜交々の賑わいに、限りなく似ていました。
「そこはごくらくでございますか?」
常世びとからの最後の問いかけに、サテ、自分は何と答えようか。