京都府宮津市、天橋立の付け根に位置する古社、籠(この)神社は「元伊勢」なる別名でも知られている。
この「元伊勢」なる呼称、社伝によると、崇神天皇の代に大和笠縫邑から天照大神が当社に遷座し、垂仁天皇の代に伊勢へと遷宮になったこと、及び当社奥宮・真奈井神社に鎮座する豊受大神が、雄略天皇22年に伊勢へと遷宮となったこと、この二つの事跡に由来する、とされる。
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真奈井神社の主座には豊受(トヨウケ)大神、籠神社の主神は彦火明(ヒコホアカリ)命。この彦火明命、又の名を天照国照彦火明櫛玉饒速日(アマテルクニテルヒコホアカリクシタマニギハヤヒ)命とも言う、れっきとした男性神である。
真奈井神社と籠神社は、奥宮/本宮という関係に加え、上宮/下宮という関係にもある。
真奈井神社=上宮=トヨウケ
籠神社神社=下宮=(アマテルクニテル)ヒコホアカリ
これはなんだか何処かの祭神、
内宮=アマテラス
外宮=トヨウケ
の鏡像形を見るような・・・気がしなくもない。
「元伊勢」とは、何をもって「元」なのか、その背後には少なからぬ含意がありそうだ。
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そんな妄想にも増して、冬空の厚雲を切り裂く太陽が鉛色の海を照らし始めた瞬間、言葉では語られる事のない真実が立ち現れた・・・ような気もした。
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